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VOL.41 2008年 6月号
早いもので、衣替えのシーズンになりました。我が家のリビングにはガスファンヒーターと扇風機が仲良く並んでいます。この時期は日によって寒暖の差が激しく、体調管理は大変ですね。
今は不動産の営業といっても、紳士的になりました。20年以上前、私がこの業界にデビューした頃は営業スタイルも古典的でありました。夜討朝駆はあたりまえ、雨の降る日の夜間訪問ではわざとお客さま宅の近くで傘を閉じ、適度にスーツを濡らしたり、暑い夏の日は家の近くまで来ると、やおら走り出し、汗だくの顔で「はあ、はあ、一刻を争う物件情報でしたから、真っ先にお客さんのところに持ってきました。奥さんすいません、お水1杯もらえます?」などの涙ぐましい演技をしたものです。前の晩に「見るだけはタダなんですから、ドライブがてらいきましょうよ♪」などと我々若い営業マンの甘言にのって、半日連れまわされた揚句、最後に見せられた物件はその日周ったどの物件より良く見え・・
「どうですか!お客さん、これいいでしょう?決めちゃいましょうよ、男なら決断です、勇気です。」
「いやぁ、今日は見るだけでまだ決めるとか、決めないとか、そういう段階では・・」
「とりあえず、会社(事務所とは言いません)にもどってお茶でも飲みましょう。お疲れになったでしょう?」
この段階で今日は断固として帰るとは、なかなか言えないものです。(実は案内後、事務所にお客様をお連れしないと、営業マンは上司からひどい叱責を受けるのです)
事務所にお客様をお連れすると、奥からにこやかに「上司」が登場してくるのです。ブランド物のスーツにローレックスで武装した正統派不動産営業管理職です。
「どうでした?お気に召した物件はありましたか?」
「最後に見た物件が一番良かった?ほーやっぱりお客さんはお目が高い!あれだけの物件はなかなか出ません。チャンスですよ。本当は昨日他のお客様で契約予定だったのが、急にキャンセルになりましてねぇ・・お客さん、ラッキーでしたね。えっ??今日は見るだけ?A君(私)、十分なご説明が君、足りなかったんじゃないのか?こんなに滅多に出ないいい物件を君がきちんとご説明出来ないから、お客様はこのせっかくのチャンスにまだ迷っておられる。(ここで頭を叩かれる)」
自分たちのために上司にいたぶられる若い営業マンをお客様はだんだん不憫に思い、
「あ、あの頭金とかまだあまり無いんですけど・・」
「大丈夫です。100%ローン組んじゃいましょう。大丈夫。2割価格乗せた契約書、銀行に出しときますから。」
「・・・」
「さっ、この購入申し込み書にお名前を、はいはい、拇印でいいですよ♪」
気の弱いお客様は根負けしてここでクロージングされてしまいます。もちろん中には首をたてに振らずに帰るお客様もいますが、帰り道、営業マンに自宅まで送られる際に、
「お客様にちゃんと御説明の出来ない自分は、この仕事向いてないのかもしれません・・・辞めるしかないかな・・」などと泣いたりするのです。
「本当はお客様に買っていただけたら、僕の初契約だったんです・・」(ほんとは営業所で1,2位を争うトップセールスです)
「・・わかった、A君。会社に戻ってくれたまえ。決めようじゃないか。君の熱い思いに私は打たれた。」
「あっ、ありがとうございます。(泣)」
今ほど情報はありませんでしたが、人と人の触れ合いのあるいい時代でした。不思議とその後のクレームは一切ありません。不動産という大きな買い物をするには、若干強引でも誰かに背中を押してもらう必要があるのかもしれませんね。
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